2008年09月24日
徒手空拳
△欲しい本メモ
・「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ/早川epi文庫
・「千々にくだけて」リービ英雄/講談社文庫
リービ英雄は外国人初の日本文学者だから日本語の小説、カズオ・イシグロは日系人だから海外小説の翻訳出版。でも産後一ヶ月は読書禁止だから、買っても読めないし、そもそも買いに出れない(と言いつつこのエントリーを携帯でポチポチ打ってりゃ、目にいい筈がない)。
「わたしを離さないで」は評価の高い作品だけど、これを抑えてブッカー賞を受賞したのは何て作品だったかなあ。朝日新聞のサンヤツ(新聞下欄の出版物広告欄。この言葉自体が朝日新聞の造語なので、サンヤツで見た、と言えばそれは朝日新聞の記事である……かどうかは定かでないが。以上、豆知識)で見たのだけど、控えてないから忘れたなあ。
2008年09月18日
「極楽・大祭・皇帝」笙野頼子
●出産日の読書
・「極楽・大祭・皇帝」笙野頼子/講談社文芸文庫
旦那に「なんで笙野頼子の小説が好きなの?」と聞かれて答えられませんでした。
出産したら暫くは身体や目を休めなくてはならない、即ち一ヶ月間の読書禁止令が出るので(新聞とかテレビは少しであれば大目に見て貰うつもり。本当は駄目なんだけど)、前駆陣痛が来ている中で大急ぎで読了しました。「極楽」はデビュー作品で群像新人賞受賞作、「大祭」は受賞後第一作、「皇帝」は初の長編です。
今まで読んだ笙野作品の中で、最も読み易かったです。それでも「皇帝」は気合いが要りましたが。そもそも笙野作品が何故読みにくいとか難解と言われるかと考えると、隠喩が独特であるからだと思われます。例えば「母の発達」で五十音のお母さんを創造する事は何を意味しているのか、「タイムスリップコンビナート」で何故マグロから電話があるのか等は、単に読み進めるだけではそれが何を伝えたい為の表現なのか分かりません。答えは各読者が探します。勿論作者は意図を持ってそういう表現をしているのですが、発想が突飛であるので伝わりにくいのです。
そう云う点でこの初期三作は現実に起こり得る状況の描写が続き、人物の心情、ストーリーの流れが読者の想像の範疇に収まっている為、理解しやすいと考えられます。分裂した母がくるりくるりと大回転したりはしないのです。
どの作品もねちねちした人間の執着を描き、憎しみがそこかしこに見られるものですが、その醜さ汚らしさが人間の人間たる由縁で小説になり得る題材ですので、それを見つめて膨らませ、昇華させた笙野頼子はやはり凄い書き手だと思います。冒頭の旦那の問いにはこう答えます。
笙野作品は人間の醜いところを独特の表現で描いていて面白いから。
2008年09月05日
当意即妙
◆本日の購入本
・「見知らぬ場所」ジュンパ・ラヒリ/新潮クレストブックス ISBN:978-4-10-590068-7
先行の長編「その名にちなんで」も読み終えていないですが、旦那が本屋で見つけて「どうする? 買う?」と電話連絡を呉れたので「買う」と即答。ジュンパ・ラヒリでクレストで、と云う余りにもストライク本をちゃんとチェックして呉れる辺り、素晴らしい連れ合いだなあとのろけてみたり。
帯や解説などを参照すると、「停電の夜に」以来の短篇集です。第四回フランク・オコナー国際短篇賞を満場一致で受賞したとの事ですが、これが異例の二次選考での満場一致決定、最終選考が行われなかったと云うから凄い。まるで「二人の王女」の姫川亜弓・相手役オーディションにおける北島マヤのような作品です(違う)。
相変わらずクレストブックスは装丁が素晴らしいなあ。
2008年09月03日
一石二鳥
◆本日の購入本@bk1
・「雪沼とその周辺」堀江敏幸/新潮社 ISBN:4-10-447102-X
・「極楽・大祭・皇帝」笙野頼子/講談社文芸文庫 ISBN:4-06-198252-4
・「超アレ国志」末弘/メディアファクトリー ISBN:978-4-8401-2236-8
「雪沼とその周辺」は文庫で読んで非常に良かったので、単行本での買い直し。「極楽・大祭・皇帝」はずっと欲しかったのだが普通の本屋で見付からないので注文。「超アレ」は、まあいつも通りのアレで、三国志ファンとしては買いの漫画なのでポチっと注文。全て良い買い物でした。まあ、誕生月で 500 円割引ギフト券が発券されるので慌てて 3000 円分集めて注文したと云うのが実際だったりしますが。
出産すると身体が弱り、一ヶ月は読書禁止と云う厳命が下される為、到着した本は今急いで読んでいるところです。「雪沼」は既読で「超アレ」は漫画ですぐに読めたので、今取り組んでいるのは「極楽~」ですが、自分の知っている笙野作品のイメージを覆す読み易さでびっくりしています。これは初期作品集との事ですが、昔はこう云う作風だったんですね。「母の発達」から入った笙野ワールドですが、思ってもみないところに道があったと云う感じです。楽しく読んでいきます、この引きこもり・憎悪小説集(裏表紙解説より抜粋)を。
2008年08月26日
「逃亡くそたわけ」糸山秋子
夏休みの読書感想文その二。
●「逃亡くそたわけ」糸山秋子/講談社文庫
躁鬱病の主人公と、東京に異常な執着を持つ名古屋出身の「なごやん」の、精神病院からの逃避行ロードムービー小説。映画化もされましたね。九州縦断旅行で、主人公が博多出身で地の文にも博多弁が多用されていて、全く異なる方言を扱う私ですが、テンポ良く読めました。無理のない方言は好きだなあ(本当に無理がないのかどうかは出身でないと分からないのですが)。
各地で起こるこまごました事件、なごやんとの衝突、病状の変化などを交えた逃避行劇はきれいに落ち着き、気持ちよく読了できます。この後に出された「スモールトーク」や「ニート」よりも小説として良いと思います。
2008年08月25日
「風花」川上弘美
夏休みの読書感想文その一。
●「風花」川上弘美/集英社
うーん。「真鶴」の方が良かったなあ。
と云うのが正直なところですが、描きたい事柄が異なる小説なので敢えて別々に、これをこれで評価してみます。三十三歳の「のゆり」は不意に夫の浮気を知らされそこから始まる物語なのですが、のゆりが余りにものんびりさんなので刺々しい感じにならないで話が進みます。
ってか何と云うかこののゆりが鈍臭くて怒らない性格なんで苛々します。要領のいい人にはいいように利用されちゃうタイプで、もし自分の好きな妻帯者の妻がのゆりみたいな性格だったとしたら、かなり闘いにくいと思います、ボケ過ぎて。
話は動かないように見えてゆるゆると動いて行きます。劇的ななにかにはありませんしカタルシスもないですが、こう云うゆっくり脱皮する感じのお話も悪くないですね。
2008年07月16日
「対岸の彼女」角田光代
●ちょっと前の読書
・「対岸の彼女」角田光代/文藝春秋
直木賞受賞作。でもこの小説の後、角田さんはどんどん小説が上手くなっている。「八日目の蝉」はなかなか継続して読めない新聞小説だったのに、ほぼ毎日読んだもんなあ。閑話休題。
タイプの異なる二人の女性のお話。視点が子持ち主婦の小夜子と、小さなベンチャー企業葵の高校生時代の二つで、同時並行に違う時代の話が進んでいきます。自分としてはどっちの視点にも共感が出来るので、読んでいて昔を思い出したり痛くなったり面白かったりと色々です。この人の文章は本当に身につまされるなあ。
小夜子が自分の居場所を探して、娘のあかりを連れて公園ジプシーをする冒頭辺りとか、高校生の葵が同級生に仲間外れにされないように目立たず行動する話なんかは、実際に女の子やった人じゃないと書けないと思います。やはり話のスリリングさから考えると、高校生葵視点の部分の続きがとても気になります。女性として生きていくって結構大変なのよ、うん。男には分かるまい。
最後に、タイトルの「対岸の彼女」という言葉が効果的に表現されています。タイプの違う女性同士の友情、と簡単にこの話をまとめる事も出来るけれど、完全無欠に相手に委ねきった友情は、女性の場合なかなか成立しない。親友でも相手の厭な部分を知っていて、そこを含めて友人であったりする事が多い。それを文章によって気付かせてくれる、男性より女性に読んで欲しい小説です。