2004年12月31日

「こころ」夏目漱石

●本日の読書
・「こころ」(夏目漱石)岩波文庫:ISBN:4-00-007204-8

 本家の日記からほぼそのまま引用。

 「座右のゲーテ」の影響で古典に手を出しています。漱石については沢山の大家が沢山の解説・解読を行っていますのであたしの方からは特に解読致さないですが、大きくまとめた印象。

 「こころ」はご存知の通り、全体が三部に分かれています。
上・先生と私
中・両親と私
下・先生と遺書
教科書等に採用されている有名は箇所は「下・先生と遺書」に於ける、先生と友人 K との間の話ですね。現国で「こころ」やってる時に必ず流行る言葉、「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」とか「僕は馬鹿だ」が出てくるのが此処。っても分かるんですよ教科書が此処を採用する理由。第一部も第二部も正直面白くない。先生と私を繋げる為に些か強引な状況や心情描写があったり、第三部への伏線と先生への心酔を描く為に第二部を設けたようにしか思えなかったりと、全てが渾身の第三部へと続く為の文章としか思えない訳です。高橋源一郎「日本文学盛衰史」によると、こころは一文を除いて無駄な文章は全く無く素晴らしい完成度の小説と云う事になるのですが、あたしはまだその境地まで読み込みが出来ません。

 しかし確かに漱石は凄いです。明治の文学ですが非常に魅力的な文章で、大層美しいです。何百年経とうとも、我々は文学と云う領域に於いて明治の主題を飽きず繰り返しているだけだと思わされます。畢竟人間は変わっていないと云う事なのか、はたまた其処に文学の限界があるのかは分かりませんが、来年も小説に触れ続けて行こうと思います。

投稿者 summer : 22:26 | コメント (164)

2004年12月25日

「作家ってどうよ?」

●本日の読書
・「作家ってどうよ?」(鈴木光司 他著)角川文庫:ISBN:4-04-183513-5

 鈴木光司、花村萬月、馳星周、姫野カオルコの四人の作家に色々な内容をインタビューし、作家と云う或る種特殊な職業についてのまめ知識を得られる本。……と云う狙い目で編集された本やと思うけど、この四人の作家のファン以外の人、特に純粋に作家になりたくてノウハウ等を求めて買う人にはお勧め出来ない。そう云う人は「新人賞の獲り方教えます」(久美沙織)や「物語の体操」(大塚英志)、ユリイカの2004年8月号特集「文学賞 A to Z」等を読む方が有意義ね。

 ラジオでのインタビューをまとめた内容なので、デビューのきっかけや執筆体勢、仕事時間や印税収入の事もそこそこ書かれていますが、同じ分量で作家個人の趣味嗜好、マイブーム等についても本文の多くが割かれています。なんでもっと汚い話(文壇での足の引っ張り合いとか)を期待しない方向でいきましょう(←期待した人)。ちょいと自分にしては物足りなかったかな、姫野カオルコのみが好きで買ったので。

投稿者 summer : 01:12 | コメント (10)

2004年12月22日

「袋小路の男」絲山秋子

●本日の読書
・「袋小路の男」(絲山秋子)講談社:ISBN:4-06-212618-4

 絲山秋子は初めて読みましたが、こう、なんとも言えない平易な文なのに独特。不思議だ。

 登場人物は極端に少ないわ、その少ない登場人物以外の人間は殆どが間接話法だわ、ずっと閉鎖的な一人称だわと滅入る要素が沢山あるのになんか面白くて一時間くらいで一冊読み終わりました(@会社帰りの本屋。お父さんお母さんごめんなさい、寄り道してました)。表題作「袋小路の男」は行き止まりの路地裏に住む男に十二年間惚れ続けてでも何も、本当に何事も起こらない話。プラトニックな恋愛だとか純愛だとか言われそうですが(または言われていますが)、そんな大人しいもんじゃないぞこれ。猫みたいに慎重に距離を計って絶対にお互いのボーダーラインは犯さないままでひたすら時間を過ごして来てる、行き止まりの男女の話だぞ。純愛よりももっと陰湿(でも暗くない)。

 登場人物は二人共「思い込み」に支配されていて、それが上手い事バランスをとって危うい均衡の上に繋がりが成り立っています。主人公の女性が惚れている格好いい先輩は顔がいいだけの駄目男だし、なんつうかこう、報われ無さそうだなーと思って読み進めていくわけです。読んでる事自体が袋小路。

 アナザーサイドの「小田切孝の言い分」と、同時収録の「アーリオ オーリオ」は少し書き方が違うので、作者の力量が伺えます。三篇の中では「アーリオ オーリオ」が一番面白かった。

投稿者 summer : 00:14 | コメント (0)

2004年12月03日

「西城秀樹のおかげです」森奈津子

●本日の読書
・「西城秀樹のおかげです」(森奈津子)ハヤカワ文庫:ISBN:4-15-030772-5

 笑えました。短篇集でほぼ全部SFつうかバカエロつうかレズビアンつうか、自分の中では如何なる処にもカテゴライズしにくい場所に居る作家森奈津子の著作。笑えました。強いて言えばSFの人なのだろーか。

 短篇集で幾つかの作品はオチが見えたものもあったのですが、レズと妙な美意識自意識を持つ登場人物とそれを客観的に見る主格の文体が魅力的なので、予想通りのオチに落ち着いても然程残念感が無いのは流石。エロ部の描写が男性視点に近いからねちこくていいですよー。出てくるの美少女ばっかだし。

 自分とは位相の違う断固たる考えを持つ人とのすれ違い話が笑いを誘います。小ネタも時代にそぐうものです。最も笑ったのは「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」、最も構成が良かったのは「タタミ・マットとゲイシャ・ガール」、一番エロかったのは「テーブル物語」。

投稿者 summer : 00:34 | コメント (0)