◆本日の購入本@専門書館
・「格闘する者に○」三浦しをん/新潮文庫 ISBN:4-10-116751-6
・「となり町戦争」三崎亜記/集英社 ISBN:4-08-774740-9
やっと! やっと出ました「格闘する者に○」が文庫で(吝嗇)。三浦しをんのデビュー作です。「我輩は女子大生である、内定はまだない」のコピー通り、就職浪人直前の女子大生の話で、当時就職活動をしていた作者が試験を受けた Boildeggs Online の村上代表が彼女の文章に目を附けて「書いてみたら?」と促した作品。三浦女史は多分あたしよりずっとオタクなのに文章はとても綺麗だから好きです。
対する(?)「となり町戦争」は第17回小説すばる新人賞受賞作で、タイトル通りいきなりとなり町と戦争が始まって仕舞うと云う話。戦争が始まっている筈なのに町はそのままで、でも広報を読むと確実に戦死者は出ている。この設定だけで凄く惹かれる。本作が載った小説すばるを買うつもりでいたら抄録だったので、単行本まで待ったのです。楽しみ。
●本日の読書
・「汝ふたたび故郷へ帰れず」飯嶋和一/小学館文庫 ISBN:4-09-403312-2
文藝賞受賞の表題作、群像新人賞受賞の「プロミスト・ランド」、中篇「スピリチュアル・ペイン」収録。これが千円以下の文庫で読めるなんてものすっごい倖せな事だと思うぞ。
表題作はボクサーの話、「プロミスト・ランド」はマタギの話、「スピリチュアル・ペイン」は馬の話、って敢えて内容に言及せずに語ってみました。だってこの人の文章が凄く良いので、あたしが下手な先入観を与えたくないし。嗚呼美しくて仕様がねぇ、もうこれは快感。
基本的にはどの話も「弱者から強者への対抗」でそこにぐっと来るのですが(「スピリチュアル・ペイン」だけは少し趣が違うか)、別に勧善懲悪でもないし、相手方も人間臭い。時には対抗したってどう仕様もない事もあるってのを真正面から書く。痺れる。一番興奮し、涙し、心に残ったのは「汝ふたたび故郷へ帰れず」ですが、多分「スピリチュアル・ペイン」の様な、日常に隠れた自力ではどうする事も出来ない弱さを描いた文章の方がこの人はいいと思います。
TBした芝田さんみたく電車こそ乗り越さなかったけれど、電車待ちの時間に読んでいたら、このままもう三十分電車が来なくてもいいなぁと思いました。ずっとずっと読み続けて、終わらなくてもいいくらいの。
いいから読め。飯嶋和一すげぇぞ。一番の問題は何処の本屋にも置いてないって事だ。
●今日の読書
・「傭兵の誇り」高部正樹/小学館 ISBN:4-09-389261-X
あたしは傭兵と云う「職業」を全く知らないので、ちょっとした興味で読んでみましたこの本。なんてったって「傭兵」って字を紙に書けと言われたら間違いなく「庸兵」って書いてたと思うくらい、何も知らなかった。作者は日本で唯一傭兵と云う職に就いている人。三十を数える今も現役。
先ずは本を読む前の傭兵に対する思い込み。
(1) 給料が高い
(2) ……を書こうとしたけれど何も思い浮かばなかった
そう、今まで考えた事すら無かったのですね。強いて云うなら特殊技能を持つ雇われ兵だから正規兵とは別の指揮系統に属して機密活動とかするのかなぁ、程度か。でも読んでみたら全く違う。命張ってんのに給料は日本の高校生バイトより安いし、外国人だから機密活動や重要な任務を任せられる事は無い。扱いは正規兵よりも断然悪くて、敵が攻めて来たら真っ先に殺されるような場所にこそ配備される、使い捨ての兵隊。絶対死ぬって判ってても行かなくちゃならない。
厭だよ、絶対にそんな職業に就きたくねぇ。
兵役がない日本人であるこの人が、んじゃ何で傭兵なんて職業を選んだのかと言えば、「最強の男になる」と云う夢があるからだ、との事。……自分は女でありますが、その思いは少し判る(判ることとやる事は別だ)。最強とは言うけれど、あたしは「強い」と云う事に関しては、守るものあってこそだと思います。単に体力や戦闘技術に附いて人より秀でていれば良いってんじゃなくて、何かを守りたいと思った時に絶対に他人を圧倒出来る力を持つ「最強」。何かに備えての力。庇うもんがなけりゃ、強さを極めても虚しいんじゃなかろうか、ってこれはあたしの考えですが、作者は作者なりの思いがあって傭兵と云う職業を生きている。
内容に附いて衝撃を受けたのは、月並みですが世界ではまだまだ戦争が日常で、傭兵はそんな中で人を殺し人に殺される生活をしていると知った事。敵の戦車一台爆発させる為に人間が三人死ぬ、地面を匍匐前進してくる人間を櫓の上から狙って射殺し続ける、敵の激しい銃撃で目の前の人が一瞬で内臓までぐちゃぐちゃの肉隗になる、そんな情景が自分の生活時間と並行で起こっているなんてやはり想像し難い。やはり日本ではちゃんとアンテナを張ってないとどんどん世界情勢に鈍化して、平和ボケしちゃうと反省。あたしにはまだまだ知りたい事、知らなくてはならない事がある。
●本日の読書
・「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎/新潮文庫 ISBN:4-10-125021-9
伊坂は良いと言われていたのと、吉川英治文学賞を取ったと云う事でオーデュボン。或る種のファンタジーでありまたミステリでもあると云う、少し珍しい感じの作品でした。舞台は現代日本。未来が見えると云う喋るカカシが殺されたが、彼はどうして自分の死を予言出来なかったのか? その謎を軸にして、妙な農村の妙な人物達がとりどりに入れ替わり立ち替わり主人公に関わってくる。島の言い伝えも絡んで、ほつりほつりと謎の答えが見えてくる、と云う作品。あれだけの長い作品をさっくり読ませる手腕は見事です。キャラクター造形が上手い。
少し内容に触れる事は「追記」に書きました。ネタバレはしていないのですが、少しだけ先入観を持って読んでいい人、どうぞ。
自分に取ってはのめり込んで全著作を買い集めると云う程ではないけれど、結構気に入りになりました。薄曇りの休日とかに読みたい雰囲気です。
内容に触れない程度に構成を考えてみると、思うに舞台となる荻島は現代日本に属し乍ら完全にファンタジーな世界であり、作者がわざわざこの世界を作ったのは、醜い話を醜くなく魅せる為だと思います。同じ状況を我々が住む世界でやると絶対に醜くて汚くてどう仕様もない物語になるのが想像出来るし、排除が困難な禍々しいものを禍々しくない様に決着つけるのが難しいし、現代社会に於ける様々な制約があるし、何よりバックグラウンドに流れている「島の言い伝え」の謎を美しく配置する事が出来ない。そう、主人公のキャラクターに負う所も多いのですが、全編を通して静かで綺麗なんですねこの話。殺人を扱っているのに寧ろ爽やか。
この爽やかさが、伊坂幸太郎の持ち味なのでしょう。読まない人にこの感覚は説明しにくい。
●本日の読書
・「オニババ化する女たち」三砂ちづる/光文社新書 ISBN:4-334-03266-4
女性は自分の肉体を女性として活用する事がとても大切、そうじゃないとストレスが溜まって怒り散らしてばかりのオニババになっちゃうよ。これが要約にして主題。
肉体を女性として活用、ってのは具体的には妊娠して出産して子育てしなさいって事です。社会や仕事や家族の関係から現代女性の出産年齢はどんどん上がり、出生率はどんどん下がる。女性の肉体は十代後半から二十代前半に掛けてが最も出産に適した年齢だからその時期に子供生んどいて、手が離れたら社会復帰出来るように法整備を行って行きましょうよ、ね。その考えには非常に賛成ですが、如何せんあたしもう二十代後半で、結婚してるけれどまだ妊娠してないの。こう云う「通過して仕舞った」年齢に対しては、手遅れなのかと思わせる説が少々辛い。三十代で未婚の人なんかが読んだらどう思うのだろうか。
そこら辺のフォロー(作者としてはフォローの気はないだろうけれど)は、それを子供に伝えてね、って事になっています。お母さんが人間とか倫理とか道徳に附いて自分なりの考えを持ち、それを子供に伝えるんだと云う思いを強く持って生活していくと、今後の日本は良い社会に成っていくであろうと。確かに自分もいずれ母になる事を考えると、自分の考えを強制しないで染み込ませる事とかは常に考えておかなきゃいけん事だとは思います。あと、肉体の触れ合いが重要だと云う事にも大いに賛成。
頷ける論は多いのですが敢えて粗探しをすると、先の出産適齢期を過ぎた女性読者や不妊症の女性への配慮などが少ないように感じました。そう云う人には「斜めの関係」って言って、近所の子供に親が教えないような知識をこっそり分けてあげる人になればいいとの提案はなされているのですが、全員が全員そうなれる訳でもあんめえ。そう云うちょこちょこ気になるところはある論でしたが、概ね学習させて頂きました。
(*TB 停止)