●大分前の読書
・「スモールトーク」糸山秋子/角川文庫
糸山秋子の書く女主人公で、車と洋楽に全く頓着しない人間はおらんのだろうか。ま、色なのでいいですが。
著者の車好きっぷりが遺憾なく発揮された趣味の一冊。角川らしい商売と云えばそうですが、此れを書くに当たって著者は大好きな車たちに試乗出来たので楽しかったろうなあ。売れない画家、ゆうこのところへ昔別れた音楽プロデューサーの本条(カマキリ)が次々と魅力的な車をとっかえひっかえ乗って現れる……と云うお話。車を媒介に二人の心はゆるゆると接近したりまた離れたり、と日常は読ませるのですが(著者は同年代、同時代の作家の中では抜群に小説が上手ですから)、車を中心に据えなければ、逆にもっと日常に密着した細やかながらも広がりのある話になったのではないかと云う気もします。